前歯がうまく閉じない、矯正治療をしても時間が経つとまた歯並びが戻ってしまう、といったお悩みの多くは、歯そのものではなく「物を飲み込むときの舌の使い方」に原因があることが多いのです。これは舌突出癖と呼ばれています。
飲み込むたびに、前歯を押してしまっているんです
普通、私たちが物を飲み込むときは、舌全体がふわっと上顎にくっつくように上がります。ところが舌突出癖がある方は、飲み込む瞬間に舌の先を前歯の裏側や、上下の前歯の間に押し当ててしまうのです。一回一回の力はとても小さいのですが、私たちは1日に数百回、多い方だと千回近く飲み込みをしています。この小さな力の積み重ねが、少しずつ前歯を前に押し出してしまうのです。
原因は、小さい頃の名残であることが多いです
この癖は、赤ちゃんの頃の哺乳や指しゃぶり、長く続いたおしゃぶりの習慣が関係していることが多いと言われています。本来であれば成長とともに自然に舌の使い方も変わっていくはずなのですが、何らかの理由でその変化が完了しないまま、大人になっても癖として残ってしまうことがあるのです。つまり舌突出癖は「今できた悪い癖」というより、「子どもの頃の動かし方がそのまま残ってしまったもの」と言えます。
矯正治療だけでは解決しないことがあります
ここに、少し見落とされがちなポイントがあります。矯正治療は歯の並び方という「結果」を整えるものですが、その原因である舌の動かし方までは変えてくれない場合が多いのです。せっかく歯並びを整えても、飲み込むたびに舌で前歯を押す癖が続いていれば、装置を外した後に少しずつ歯が元の位置に戻ってしまいます。奥歯は噛めるのに前歯が閉じない「開咬」という状態が、矯正後に戻りやすいのはこのためです。
舌の使い方を、もう一度学び直すという方法
そこで近年注目されているのが、舌の正しい位置や動かし方を練習する口腔筋機能療法という方法です。リラックスしているときに舌の先を上顎の前歯の少し後ろに置く感覚を体に覚えさせ、飲み込み方そのものを一から学び直していきます。地味なトレーニングに見えますが、歯並びの土台を作り直すという意味では、矯正装置と同じくらい大切なアプローチだと言えます。
歯並びの乱れが気になったときは、歯だけでなく、ぜひ舌の位置にも目を向けてみてください。
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執筆者
医療法人凌和会すが歯科矯正歯科
理事長 菅 良宜
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