「前触れもなく前歯が欠けてしまった」というご相談の背景には、爪やペン、氷などを噛む癖によって、目に見えないひびがコツコツと蓄積されていることが少なくありません。
レントゲンにも映らない、小さなひびなんです
爪やペンのキャップ、氷などを日常的に噛んでしまう方は、実はとても多いです。ご本人としては「柔らかいものを噛んでいるだけ」というつもりでも、歯の表面には局所的にかなり強い力がかかっています。厄介なのは、この力によってできるひび(マイクロクラックと呼ばれます)がとても細かいもので、普段の視診やレントゲン検査では見つけることができない点です。このひびは何年もかけて少しずつ深くなっていき、ある日、食事中や何気ない瞬間に、突然歯が欠けるという形で表面化してしまうのです。
「壊れた瞬間」より前にこそ、本当の原因があります
歯医者さんでは欠けてしまった歯そのものを治療しますが、これはあくまで結果への対応です。本当に大切なのは、そもそもなぜその物を噛みたくなってしまうのか、という行動のきっかけの部分です。多くの場合、これは無意識のストレス発散だったり、手持ち無沙汰を紛らわせるための行動として働いていたりします。会議中や締め切り前、考え事をしている時など、特定の状況と結びついて習慣になっていることが多いようです。
噛む対象を変えるだけでは、癖はなくなりません
よく「爪を噛むならガムに変えましょう」といったアドバイスを見かけますが、これだけでは根本的な解決にならないことが多いです。噛む対象を変えても、その行動を引き起こしているきっかけの感情がそのまま残っていれば、別のものを噛むようになってしまったり、結局元の癖に戻ってしまったりするからです。
きっかけを見つけてあげるという視点
本当に効果的な対策は、「噛みたくなる直前に、何が起きていたか」を振り返ってみることです。緊張していた時、退屈だった時、考え事をしていた時など、パターンが見えてくると、その状況そのものへの対処(深呼吸をしてみる、手を動かす作業に置き換えてみるなど)がしやすくなります。
歯が欠けてから慌てて治療するのではなく、欠ける前の「なぜ噛みたくなるのか」に目を向けてみることが、本当の意味での予防につながります。
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執筆者
医療法人凌和会すが歯科矯正歯科
理事長 菅 良宜
治療理念
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